やっつけ本番

思いついたら書きます

私は無駄なものが欲しい

ぽっぽアドベント 『変わった/変わらなかったこと Advent Calendar 2020』(カレンダー1)に参加しています。20日担当のまどりです。
主催:はと (@810ibara) | Twitter



お金がない。本当にお金がない。

「今月ちょっと使いすぎちゃってピンチなんだ〜」とかそんな危機感レベルではなく、本当にお金がない。家庭の経済状況がすこぶる悪い。今の私は(我が家は)リアルかつ切実に「お金がない」。

女3人家族の我が家は、全員が短時間のパート勤務か非正規雇用で働いている。極めてプライベートな話になるので詳細は省くが、大病が重なったり、前の職場で色々あったり、まあとにかくそれぞれにあらゆることが起きたのだ。

私は仕事を2つ掛け持ちしていたが、片方の派遣の仕事はCOVID-19によってすっかり消し飛んだ。今はなんとか本業のシフトを増やしてもらったが、自転車操業というか焼け石に水感は否めない。
自粛要請が出た今年の3月〜5月の間は、お金の心配と、働きに行けば行くほど感染リスクが高まるのではないかという恐怖と、でも働かなきゃ食べていけないし……という矛盾と不安に代わる代わる引っ張られて、引き裂かれそうだった。本当に精神的につらかった。
今ではその不安に慣れてしまったのか、騙し騙し自分を宥める方法を覚えてしまったのか、春頃より少し気持ちは落ち着いた。問題は何一つ解決していないし、むしろ悪化しているのに。

「お金がない」と人はどうなるかと言うと、「本当に好きなものだけ」「本当に必要なものだけ」を選ぶようになる。
今年は経済的な理由だけでなく、COVID-19の影響で「不要不急の外出は控える」ことも意識していたので、なにか行動を起こそうとする度に私は、「本当にこれが好きか」「本当にこれが必要なのか」と全てを一々ふるいにかけるようになった。

まず、中学生の頃からずっと応援している「嵐」。これだけは考えるまでもなかった。嵐は私にとって絶対に必要なもの。

嵐は、今年の12月31日を最後に活動を休止する。
4月に予定していた北京公演は中止になり、5月に予定していた新国立競技場でのライブは一旦延期になった後、11月に無観客配信ライブとして開催された。アルバムツアーも計画していたようだが、それも無くなり、休止最後の活動は31日に開催される東京ドームでの無観客ライブだ。
今年の春以降、嵐のイベントやライブは全てがオンライン配信になった。配信ライブのチケットは絶対必要なものだった。だから買った。
でも、グッズはいつもより控えめにした。パンフレット、うちわ、クリアファイルだけ。活動休止前ということで今たくさんの雑誌の表紙を飾っているが、とても全ては買えないので、厳選したものをだけをいくつか選ぶ。

次に、俳優・前田公輝さんの初めての写真集とカレンダー。これも私には必要な物なので(と半ば言い聞かせて)買った。
前田さんがコラボしているアパレルブランドで最近新作のアイテムが発売されて、本当はいくつも欲しいものがあったけど、イヤーカフを一つだけ注文した。シンプルなデザインがとても素敵で、手元に届く日を心待ちにしている。

前田さんのファンになったきっかけは、去年友人に薦められて観た映画『HiGH&LOW THE WORST』の轟洋介役。衝撃的な出逢いだった。今年も相変わらず轟とハイローのことは追っかけた。
hagornmo1367.hatenablog.com
まだ派遣の仕事に変わりがなく、東京まで気負いなく出かけられた2月初旬には、ファンイベントにも参加した。前田さんに直接「応援しています」と想いを伝えることができた。思い返せば、すべてがギリギリのタイミングだった。本当にあのとき勇気を出して東京に行ってよかった。

今でもあの日を思い返すと、心がふわーっと浮き上がる。不安な現実の中でも、幸せな記憶を頭の中で広げれば、確かにあのとき素晴らしい時間があったのだと、過去の自分の幸福に少しだけ安堵することができる。
hagornmo1367.hatenablog.com
次に、映画。今年は映画やお芝居など、劇場で鑑賞する機会が例年より減った人がほとんどだったと思う。
これも私には必要なもの……だった筈だが、映画が好きな私も、劇場から足は遠のいた。
ここでも私は、「本当に観たい作品はどれか」とたくさんの映画をふるいにかけた。不特定多数の人が出入りする場所に頻繁に通うのは……という心配も理由の一つだったが、一番の大きな理由はお金だった。金銭面を考えると、もう週に何本もの映画を観に行くことは難しかった。
脚本、監督、出演者、Twitterでフォロワーさんたちの前評判をチェックして、そこから絞って絞って絞った作品だけを、サービーズデーの割引を使って鑑賞した。

今年はあまりたくさんの映画を観ることはできなかったけど、中でも特に好きだったのは、『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』『初恋』『ハスラーズ』『ワンダーウォール 劇場版』『私がモテてどうすんだ』『星の子』『スパイの妻』『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』。
今年のうちに、『燃ゆる女の肖像』『私をくいとめて』は観たいと思っている。

次に、本。小さい頃から読書が大好きだった。図書館と本屋には何時間でもいられるし、本の背表紙を撫でているだけで気分が落ち着く。
これも私の人生には欠かせないものだったが、本すらも「でも本当に必要なものなの?」とふるいの対象になった。今年一番我慢したものは本かもしれない。
買うなら文庫本。できれば上下巻に分かれていないやつ。新作の単行本も欲しいけど、1800円に消費税……約2時間分の時給だと考えるとなかなか決心がつかなかった。

そんな中でも、今年読めてよかったなと思った本は、津村記久子『これからお祈りに行きます』『ポースケ』、ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー『その名を暴け:♯MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』(これは誕生日に友人がプレゼントしてくれた)。

他にも、「本当に必要?」と我慢したものはたくさんある。

一目惚れしたアイシャドウ、友達との2軒目の食事、古くなった枕を買い換えること、古着屋ではないお店で洋服を買うこと(古着自体は大好き)、試し読みして続きが気になった漫画、通勤用の新しいスニーカー。色々なものを、「絶対に無ければ(しなければ)困るものじゃないし」と見送った。

クレジットカードの利用額が前月より減ると、ホッと胸を撫で下ろした。高いものは買えないけどたまにコスメも買うし、なんやかんや映画も観れてるし、衣食住以外に使えるお金が少しはあるんだから(衣食住もこの先どうなるか怪しいけど)恵まれてる方だよ。そう自分を納得させて、"日々のささやかな幸せ"を感じようとしていた。

でもふと、「本当に?」と思った。

このアドベントを書くために自分の一年を振り返ってみたとき、なだれ込んできた感情はやるせなさだった。

ほんとは、活動休止前の嵐のグッズを、表紙を飾っているいくつもの雑誌を、山ほど買いたかった。

映画だって本だって、もっと色んな作品を観たかったし、読みたかった。「本当にお金を払う価値がある作品か」なんて損得勘定の目で好きなものを見たくなかった。大好きな映画を観ている時でも、頭の片隅で「来月の支払いどうしよう」と考えている自分が嫌だった。

友達から、「ごめん!このあと予定があって……」と食後の2軒目のカフェに誘われなかったとき、少しホッとした。でも本当はホッとしたくなんてなかった。

ふらっと入ったお店で衝動買いがしたい。漫画を気まぐれにジャケ買いしたい。

「本当に必要なものだけ」を選んでいく生活はとても苦しかったのだと、今さらになって気がついた。

私は今、正社員を目指して転職活動をしている。この記事を書いているちょうど今日、久しぶりに書類選考が通って、今度面接がある。
不安と焦りでいっぱいだけど、同時に「自分が自由に使えるお金を増やす」という確固たる目標ができた。「本当に必要なもの」だけじゃ嫌だ。私は無駄なものが欲しい。やってやる。夢は夏と冬にボーナスを貰うことだ。

来年はどんな年になるんだろう。
心の拠り所だった嵐は、新年を迎えると同時にいなくなる。私は彼らが今まで見せてくれた景色を胸に、何とかやっていくしかない。最後に直接顔を見て、「今までありがとう」と伝えられなかったことだけが心残りだ。

願わくば家族が健康で、転職活動が上手くいって、今年泣く泣く買い逃した嵐のグッズを集めて、ちょっと気になる映画を観て、たまには単行本の小説を買って、少額でも寄付をして、憧れのPAT McGRATH LABSのアイシャドウを塗って、友達との2軒目3軒目の食事にも自分から気軽に誘えて…………来年はそんな生活ができたらいいなと思っている。
頑張っていこうと、思っている。


クリスマスのアドベントにこういう話はどうなのかな……と悩みましたが、もし同じような不安を抱えている方がいたら、と思って書かせてもらいました。
みなさん、良いクリスマスと良いお年を!来年も私たちなんとか生きていきましょう。

そして、轟洋介にも幸あれ。来年こそ元気な姿を見ることができるのでしょうか。常に轟洋介のことを気にかけています。

最後に。はとさん、今年も素敵な催しをありがとうございます。明日のアドベント担当はおがわさん、黒あんずさん、ほのかさんです!
カレンダー2 同日担当:FIGAROさん
カレンダー3 同日担当:じゅごんさん
(↓昨年のぽっぽアドベント参加記事)
hagornmo1367.hatenablog.com